特殊清掃コラム
特殊清掃技術を駆使しても絶対に消えないにおいの正体
今回はその消臭についての話題をご案内するのですが、臭いの中には特殊清掃技術をいくら駆使しても消えない臭いというものがあり、その正体とは何か、また消臭作業をする上で妨げとなる臭いや絶対に外に漏れない臭いなど特殊清掃のにおいにまつわるお話を4つご紹介いたします。
これらからもにおいには記憶や感情を呼び覚ますものもあり、夕暮れの町の中で夕食のにおいが漂ってきたら子供の頃を思い出すとか、お寺に行くとなんだか落ち着くといったことも同じでブルースト効果と呼びます。
においには快いものと不快なものがありますが上記のにおいは快のほうで文字で表現すれば「匂い」で、私たちが扱うにおいは不快のほうで文字だと「臭い」となります。ひとくちににおいと言っても思い出や記憶に繋がったり、嗅いだだけで脳が絶対受け入れることができないものまでいろいろあります。今回の記事はそんな不思議とも言えるにおいにまつわるお話です。
脳にインプットされた臭いは永遠に消えない!?
孤独死の現場では第一発見者となった人がいつまで経ってもその時の光景が頭に焼き付いて離れないとか、部屋の前を通るだけでその当時の光景を思い出すということと同じく臭いに関しても本当は臭いなんかないのににおいを感じてしまうということが実際にあります。私たちが経験した脳ににおいがインプットされてしまった事例をご紹介します。
東京都内の単身用1Kマンションで孤独死が発生し近所からにおいの苦情が来てるからと連絡が入ったのは真夏の夕方近くでした。夕方の一報で季節的にはまだ明るいがスタッフの退社時間まで間もなくというタイミングでした、特殊清掃は基本的には周りに人がいない時間がのぞましい。
理由は簡単で人の目があるとひじょうにやりにくい、やることそのものに変わりはないけど好奇の目で見る人、なんだかんだと構ってくる人、臭いや害虫のことで怒りがピークに達しており感情のぶつけどころがないから我々に食ってかかる人、特殊清掃作業の夕方や夜間開始はやりにくい。
近隣が困ってると懇願されればやらないわけにもいかず帰ってきたばかりのチームを現地に飛ばしたのでした、伝えていた見込み予定より40分も遅れて到着したにもかかわらず管理会社の担当者とその陰に隠れるようにして立つ遺族と思われる女性は怒ることもなく出迎えてくれた。
挨拶もそこそこにエレベーターに乗り廊下を歩きながら担当者は「周りがうるさくて」と小さな声で言いました、玄関や窓、通気口には養生テープで目張りがしてあり昨日この担当者が貼ったということでした。
<得ることができた状況>
- 孤独死したのはまだ50代の男性
- 死因は今のとこ不明だけど事件性はなし
- 死後30日と聞かされてる
- 発覚したのは3日前
- 女性は故人の妹
部屋は死後30日とあってそれなりの異臭濃度、ただ汚染痕の大半はベッド上に残留し腐敗体液は床にも垂れてるけどラグが敷いてあり限定的に見えました。部屋も荒れていず家財も少なめ、あまりこのような部屋の状態はなく正直珍しいものです。
ベッドマットを梱包し周囲のにおいを含んでいそうなものを撤去し外部に通じていそうな部分をすべて塞ぎオゾンを翌日まで間隔運転させこの日は作業終了としました。
時間が時間なんでとりあえずの一次処理だけにし本格的な作業は翌日に行うことにしたのです、翌日の打合せをエントランスでしてる際に一人の男性が近づいてきてこう言いました「俺の部屋も消毒してくれよ!」言い方は若干乱暴なものの高圧的なものではなく、むしろ懇願に近いものでした。部屋を確認すると確かに浮遊している臭いがあったので、簡易的な消臭を行いました。
翌日にはご遺族と遺品整理を行い、同時進行で完全防臭処理も手掛けていき、およそ7日ですべての処理が完了したあと部屋の引渡しを行ったのでした。
臭い戻り発生か!?隣の人がまだ臭うと苦情
管理会社の担当者と初めてこの部屋に入る人も同行していたので三名で入室をしました、入室しても誰も臭いを感じません、臭気計もほぼ動きがありませんし、初めてこの部屋に来る管理会社の人も何も感じないと言うことでした。通風孔や換気扇ダクトなど臭い溜まりのできやすい場所もしっかりチェックし残留したにおいがないことを確認し隣室へ伺い臭気チェックをしたのですが誰も臭いを察知することができませんでした。
どんな時ににおいを感じたかと質問したところ、積極的な交流があったわけじゃないけど故人の顔を思い出した時、最初に異常を感じたときの状況を思い出した時という言葉が出ました。おそらくPTSDと結論付け説明をしましたがご本人はなんとなく浮かない顔で「そうですか」とだけ言い私たちは部屋を後にしたのでした。
最近も孤独死の第一発見者となってしまった大家さんが、少し離れた自宅ですらその人の顔を思い出した途端においを感じてびっくりしたという話を聞きました。衝撃的な体験であればあるほど臭いすら再現されてしまうという事例で、こればかりは私たちの消臭技術を駆使しても消せるものではありません。
孤独死があった部屋の隣人が2年たっても臭うと電話
私たちが特殊清掃に入ってるときにも何度も声を掛けていただき時にはお茶の差し入れもしてくださいました。故人とは特別親しいわけではなかったけど顔を合わせば挨拶をする程度、しかし同年代で一人暮らしということもあり話すたびに「かわいそうに」と仰ってました。
特殊清掃も完全消臭も滞りなく終わりにおいや汚れはまったくない状態でご遺族に引渡し完了としたのですがそれから2年以上も経過した頃に新たな問題が浮上しました。
だからとて私たちが行ってどうなるわけでもなく、もし不審点があったとしても我々がすぐ何らかできるものでもないので管理人に言ってみてくださいとその場は電話を切りました。その後すぐ管理会社からも電話があり経緯を聞いてみると2年前の孤独死発覚以降時々このようなことがありそのたびに対応はするけど現在住んでる人の安否は確認できており今回は1か月近く所用で留守にしているということでした。
どうやらお隣さんの中では長らく顔を見ない、隣に人の気配がないという状況が結びついて当時のことを思い出してしまうのではないかと思うのです。管理会社に玄関前のにおいについても聞いてみましたが管理人から報告を受けていないので何もない思うということでした。
人は強烈な体験をしたときにその時と同じ状況を察すると臭いですら脳で再現されてしまうという例でした。お隣さんの脳内ではしばらく見かけない→隣から人の気配がしないというだけで臭いすら再現されてしまったのです。いわゆるPTSDによるにおいはどんな凄腕の特殊清掃業者でも消すことはできません。
部屋の気になる臭いを確実に消すには
孤独死でもゴミ屋敷でも消臭作業としてはやることは同じで、臭い発生源となる汚れを清掃する。これが消臭には絶対に必要なプロセスで清掃(汚れの除去)さえすれば臭いは確実に消えるのです。
臭いがいつまで経っても消えないという場合は、間違いなく臭い発生源が残っているのが原因で消臭の不備というより清掃の不備であることが99.9%です。昨今特殊清掃を入れたのに臭いが消えないとか臭いが戻ってきたということを耳にする機会が増えましたが、臭いの発生メカニズムと消臭の原理原則を理解しておらず、なおかつ腕が悪く特殊清掃技術がないからと断定できます。
本当に確実な消臭をしたいと考えるなら東京近辺ではまごのてをお選びください。
株式会社まごのて 代表取締役
佐々木久史
主に特殊清掃技術の開発や指導に注力しています。まごのては宅地建物取引業の免許を受けており私は専任の宅建士です、また賃管士資格を保有しており不動産取引関係には精通しています。
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孤独死が起きてお困りの方は私にお気軽にご相談ください。