特殊清掃コラム

実例紹介
2025.03.19

孤独死が起きた部屋の家賃はいつまで発生し誰が支払うのかを解説

孤独死が起きた部屋|家賃はいつまで発生し誰が支払うのかを解説

孤独死が起きた部屋の家賃についてを解説したいと思います。2023年の5月に起きた事例を元に考察していきます。今まで死後の家賃についてトラブルになった事例がなく今回初めての経験でした。

不動産管理会社や大家さんは特に覚えておいたほうが良い知識ですので記事にします。今回の家賃トラブルになった経緯は下記の通りです。

1.死後約1か月で賃借人が死亡した状態で発見。
2.その後ご遺族の手で家財撤去と特殊清掃業者が手配され実施(孤独死発覚から2週間)
3.部屋に臭いが残っているとして大家さんは引渡を拒否
4.ご遺族は一度は特殊清掃を行ったのだからこれ以上は責任なしと宣言。
5.大家さん側で特殊清掃業者(まごのて)を手配。
6.孤独死発覚から約3ヵ月で完全消臭完了

大家さんはご遺族に対し孤独死が発覚し完全消臭完了までの家賃およそ18万円と特殊清掃費用40万円を求めたものである。
 
特殊清掃後の引渡拒否
 

賃貸住宅は引渡が終わってはじめて契約終了

上記の孤独死発生から完全な消臭完了までの間にアパートの大家さんは一度部屋の引渡を拒否しています、理由は特殊清掃が完全なものでなく汚れや臭いが残っていたからに他なりません。

住人が孤独死したケースでは損害賠償請求やリフォームなどの費用負担でトラブルに発展することはよくありますが、引渡完了までの家賃についてトラブルになったのは初めて見たので少し驚きましたが法律的には当然のことだなと感じたものです。

その後大家さん手配で私たちまごのてが再度特殊清掃をし、汚れと臭いがなくなりその時点で大家さんは引渡完了としたのです。

そして完全に特殊清掃が終わるまでの賃料を請求したというのが今回の問題点となるのですが、部屋の明渡は『原状回復が完了』して初めて引渡成立で契約の終了となります。これはいわば契約関係では当たり前のことで、孤独死という極めてレアなケースですが契約終了の考え方とタイミングは大家さんの言う通りで、今回の場合ですとご遺族は請求通りの金額を支払わなければいけません。

今までご遺族や連帯保証人が孤独死の後始末の中で必要とされる費用の中で未払家賃や引渡までの経過家賃のことを書いたことがなかったので追記するものです。

死亡時点で家賃支払い義務は無くなると主張するご遺族

この家賃についての争いは大家さんの認識とご遺族の認識、そして慣例が複雑に絡み合ったことで起きたと考えられます。

ご遺族は事前に不動産会社に家賃のことで相談しており、不動産会社の担当者はこのような例では孤独死発覚後の家賃を請求する例はほぼないと言われたそうです。私自身も死後の家賃請求をしたとかされたと言う話は聞いたことがありませんでした。これらは一種の慣例的なものであって電車に飛び込み自殺をした場合に電鉄会社から莫大な損害賠償請求がされるという噂がありますが現実的に請求がされたことはないと聞いています。

では、法的には死亡後の賃貸住宅の家賃はどうなるかですが賃借人(部屋の借主)は確かに死亡していますが法的には契約自体は継続しており、契約そのものは相続されていますので引き渡しまでの家賃支払い義務は相続人や連帯保証人に対して発生します!ではどのような根拠で家賃支払い義務があるのかをご説明していきます。
 
孤独死が起きた場合の家賃

 

『賃借権』は相続される=遺族に支払義務あり

まず家賃は誰が支払うかという大原則を考えますと当然借りてる本人に支払い義務があります。今回の場合はその本人が亡くなってるのですから支払う立場の人はいないじゃないかと言うのがご遺族側の主張です。

一見当たり前のように聞こえますし、一般的にも大家さん側も死んだ人からはお金もらえないね、となるのですが法律的にはそのような単純なものではありません。

人が亡くなれば相続が発生します。相続はお金や不動産を引継ぐだけではなく本人の権利や義務も引継がれます。権利や義務とは何かといいますと、損害賠償請求権や求償権など生前本人が有していた権利、簡単に言えば誰かにお金を貸していて、それを返せという権利(求償権)も相続対象ですし、本人が契約した電気やガスなどの光熱費も引継がれます。

賃貸の部屋を借りる権利である賃借権も引継がれるのですから、家賃の支払義務も同時に引き継がれるということになります。便宜上記事内ではご遺族と書いていますが、厳密にいえば相続人であるご遺族の場合です。この例の場合は相続人でありこの部屋の連帯保証人でもありましたので家賃の支払義務があるということです。したがって孤独死のケースであっても相続人がいる限り賃料は発生することになります。

部屋を完全な状態で引渡してはじめて退去引渡完了です

家賃の支払義務があることはわかりましたが、次はその家賃はいったいいつまで支払わなければいけないのかについてです。

今回のご遺族は孤独死発覚後にすぐ家財を手配して部屋を空にし、特殊清掃業者まで手配して引渡に挑みましたが大家さんが確認した際に室内においが残ってるということで引渡拒否をしました。

賃貸の部屋を退去する際には原状回復義務というものがあるのはご存じだと思います。経年劣化は加味するが入居当時のキレイな状態で返してくださいねというものです。つまり孤独死が起きた部屋の場合は荷物を出して空にするだけでは不十分でご遺体から流れ出た腐敗体液や臭いを無くした状態で返さなければいけないのです。

この部分は原状回復トラブルで一番多い事象ですので、私たちも何度もご遺族と大家さんの間に入ってきましたが、いくら特殊清掃業者を入れようが汚れと臭いが消えていなければやったことにはならない、というのが法的な見解です。

再三申上げてる通り、ご遺体痕由来の汚れと臭いが完全に消える特殊清掃業者を選ばないと大損しますよと言うのは完全な原状回復を視野に入れてるが故のことです。

今回のケースでは最終的に大家さんの主張する請求100%で終わりましたが、引渡完了までの家賃支払いについてはギリギリまで難色を示していたそうで、ご遺族は当初施工した特殊清掃業者に対し賠償を求めると言っていたと後日聞きました。
 
孤独死が起きた部屋のリフォームと費用負担の解説

 

リフォームまで終わってこそ原状回復の完了!?

まごのてで経験した原状回復トラブルの中ではリフォームまでやってはじめて原状回復の完了だと主張した大家さんがいました。特殊清掃を施し臭いや汚れがないのは当然のことで部屋自体は元に戻っていないという主張です。

確かに大家さんの言う通り特殊清掃完了時はまだ部屋として機能する状態ではありません。例えば床板の一部が無かったり壁ボードが無い状態ですので部屋としての機能は果たしません。

やはり大家さんの言う通りリフォームまで終わって原状回復の完了ではないかと思いますが、では汚れた床板を洗って元に戻せばいいのでしょうか?石膏ボードも再生して戻せば良いのでしょうか?現実問題そんなわけにはいかず自ずと新調することになります。

この新調するということが元賃借人の行うべき範疇ではないという考え方があります。例えば特殊清掃で床板の一部が無くなったとしても元の賃借人の責任があるのは一部を元に戻す部分であって全部ではないのです。したがって床板全部を貼り替えたとしても負担は一部であるとの考え方ですのでその費用は大家さん側で最終的なリフォームをした時に按分した費用請求で良いじゃないですかというものです。リフォームの費用負担については個別記事がありますので是非ご一読ください。また特殊清掃前もしくは途上でもどの時点で完了なのかをしっかり打ち合わせておくことが大事です。

孤独死の原状回復トラブルの仲裁やアドバイス

孤独死が起きるとその原状回復過程では様々なトラブルが起こります。特に今回のようにご遺族がいる場合はなおさらで、逆に最初から相続放棄を表明して一切何もしない場合やまったくご遺族も連帯保証人もない場合はトラブルは起きません。

大家さんはいわゆる事業者に当たりますから法的知識に長けていたり経験値も高い人がいますが、ご遺族や連帯保証人は基本的には素人です。素人ゆえに今回のように死亡時点で家賃の支払義務を免れると考える人がいても不思議ではなく、キチンと説明できる人がいればトラブルは起こらなかったと言えます。本来であれば最初に相談した不動産会社の担当者がキチンと説明すべきことでした。

私たちまごのては今まで目の前で大家さんと借主との揉め事を何度も見てきました。孤独死案件だけではなくゴミ屋敷でも再三遭遇してきており、そのたびに知識さえあれば仲裁に入ったりアドバイスができるのにと考えていました。

私、佐々木久史が宅建や行政書士資格に挑んだ理由も特殊清掃現場でのトラブルに遭遇したことに起因しており、正しい法律知識を身に付ければ多くの人の役に立つと考えて宅建や行政書士資格を取り、会社としても不動産取引業の免許を取得するに至ったのです。孤独死などでお困りの方は是非まごのてに安心してご依頼ください。

知識も技術も長けてる特殊清掃業者

まごのては技術、知識ともに申し分なしの特殊清掃業者

今回の記事で取り上げたトラブルは大家さんとご遺族の家賃問題はそもそも最初にご遺族が手配した特殊清掃業者がキチンと消臭をしていればそこまで大きな金額にならなかった問題です。元はと言えば特殊清掃に不備があったから大家さんは引渡を拒否したのであって意地悪で拒否したわけではありません。

特殊清掃業者と掲げてるのだからどこに頼んでも一緒だろ、それなら安いところでいいではないかと安易に特殊清掃業者を選んでしまった結果です、事実この事案は特殊清掃費用は8万円だったけど何故か家財撤去は50万円を超えたそうです。

家財の量が不明なので高い安いの判断はできませんが、たとえ8万円の激安料金だとしても特殊清掃と謳ってる限り完全消臭は当然です。※他社やり直しとして施工したまごのては40万円でした、ご遺体痕はほとんど洗浄されておらず臭い濃度もそれなりに高いままでした。

つい最近もある特殊清掃業者に問合わせたところ「においが残ることはご了承ください」と言われたという笑えない話も現実的にあります。まごのては大家さんやご遺族など特殊清掃を必要とする人を悲しませたくない!その思いで技術と知識の研鑽を怠りません。

特殊清掃業界の先駆者としてオピニオンリーダーとして当然の思考ですし、今後も更なる技術追求をしていく所存です。また実際の施工に際しても完全な形で引渡せるよう仕上げますので安心してまごのてにご依頼いただければと思います。
記事執筆:

株式会社まごのて 代表取締役
佐々木久史

主に特殊清掃技術の開発や指導に注力しています。まごのては宅地建物取引業の免許を受けており私は専任の宅建士です、また賃管士資格を保有しており不動産取引関係には精通しています。 

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