特殊清掃コラム

実例紹介
2024.02.01

孤独死が起きた部屋|家賃はいつまで発生し誰が支払うのかを解説

孤独死が起きた部屋|家賃はいつまで発生し誰が支払うのかを解説

孤独死が起きた部屋の家賃についてを解説したいと思います。2023年の5月に起きた事例を元に考察していきます。今まで死後の家賃についてトラブルになった事例がなく今回初めての経験でした。

不動産管理会社や大家さんは特に覚えておいたほうが良い知識ですので記事にします。今回の家賃トラブルになった経緯は下記の通りです。

1.死後約1か月で賃借人が死亡した状態で発見。
2.その後ご遺族の手で家財撤去と特殊清掃業者が手配され実施(孤独死発覚から2週間)
3.部屋に臭いが残っているとして大家さんは引渡を拒否
4.ご遺族は一度は特殊清掃を行ったのだからこれ以上は責任なしと宣言。
5.大家さん側で特殊清掃業者(まごのて)を手配。
6.孤独死発覚から約3ヵ月で完全消臭完了

大家さんはご遺族に対し孤独死が発覚し完全消臭完了までの家賃およそ18万円と特殊清掃費用40万円を求めたものである。
 
引渡拒否
引渡が終わってはじめて契約終了
上記の孤独死発生から完全な消臭完了までの間にアパートの大家さんは一度部屋の引渡を拒否しています、理由は特殊清掃が完全なものでなく汚れや臭いが残っていたからに他なりません。

住人が孤独死したケースでは損害賠償請求やリフォームなどの費用負担でトラブルに発展することはよくありますが、引渡完了までの家賃についてトラブルになったのは初めて見たので少し驚きましたが法律的には当然のことだなと感じたものです。

その後大家さん手配で私たちまごのてが再度特殊清掃をし、汚れと臭いがなくなりその時点で大家さんは引渡完了としたのです。

そして完全に特殊清掃が終わるまでの賃料を請求したというのが今回の問題点となるのですが、部屋の明渡は『原状回復が完了』して初めて引渡成立で契約の終了となります。これはいわば契約関係では当たり前のことで、孤独死という極めてレアなケースですが契約終了の考え方とタイミングは大家さんの言う通りで、今回の場合ですとご遺族は請求通りの金額を支払わなければいけません。

ご遺族や連帯保証人が孤独死の後始末の中で必要とされる費用の中で未払家賃や引渡までの経過家賃のことを書いたことがなかったので追記するものです。
 

死亡時点で家賃支払い義務は無くなると主張するご遺族

この家賃についての争いは大家さんの認識とご遺族の認識、そして慣例が複雑に絡み合ったことで起きたと考えられます。

ご遺族は事前に不動産会社に家賃のことで相談しており、不動産会社の担当者はこのような例では孤独死発覚後の家賃を請求する例はほぼないと言われたそうです。私自身も死後の家賃請求をしたとかされたと言う話は聞いたことがありませんでした。

では、法的にはどうなのか?
結論から言いますとご遺族の認識が間違っており、引き渡しまでの家賃支払い義務は発生します!どのような根拠で家賃支払い義務があるのかをご説明していきます。

完璧な消臭ができる特殊清掃技術と法的知見を有する特殊清掃業者

『賃借権』は相続される=遺族に支払義務あり

まず家賃は誰が支払うかという大原則を考えますと当然借りてる本人に支払い義務があります。今回の場合はその本人が亡くなってるのですから支払う立場の人はいないじゃないかと言うのがご遺族側の主張です。

一見当たり前のように聞こえますし、大家さん側も死んだ人からはお金もらえないね、となるのですが法律的にはそのような単純なものではありません。

人が亡くなれば相続が発生します。相続はお金や不動産を引継ぐだけではなく本人の権利や義務も引継がれます。権利や義務とは何かといいますと、損害賠償請求権や求償権など生前本人が有していた権利、簡単に言えば誰かにお金を貸していて、それを返せという権利(求償権)も相続対象ですし、本人が契約した電気やガスなどの光熱費も引継がれます。

賃貸の部屋を借りる権利である賃借権も引継がれるのですから、家賃の支払義務も同時に引き継がれるということになります。

便宜上記事内ではご遺族と書いていますが、厳密にいえば相続人であるご遺族の場合です。この例の場合は相続人でありこの部屋の連帯保証人でもありましたので家賃の支払義務があるということです。

部屋を完全な状態で引渡してはじめて退去引渡完了です

家賃の支払義務があることはわかりましたが、次はその家賃はいったいいつまで支払わなければいけないのかについてです。

今回のご遺族は孤独死発覚後にすぐ家財を手配して部屋を空にし、特殊清掃業者まで手配して引渡に挑みましたが大家さんが確認した際に室内においが残ってるということで引渡拒否をしました。

賃貸の部屋を退去する際には原状回復義務というものがあるのはご存じだと思います。経年劣化は加味するが入居当時のキレイな状態で返してくださいねというものです。つまり孤独死が起きた部屋の場合は荷物を出して空にするだけでは不十分でご遺体から流れ出た腐敗体液や臭いを無くした状態で返さなければいけないのです。

この部分は原状回復トラブルで一番多い事象ですので、私たちも何度もご遺族と大家さんの間に入ってきましたが、いくら特殊清掃業者を入れようが汚れと臭いが消えていなければやったことにはならない、というのが法的な見解です。

再三申上げてる通り、ご遺体痕由来の汚れと臭いが完全に消える特殊清掃業者を選ばないと大損しますよと言うのは完全な原状回復を視野に入れてるが故のことです。

今回のケースでは最終的に大家さんの主張する請求100%で終わりましたが、引渡完了までの家賃支払いについてはギリギリまで難色を示していたそうで、ご遺族は当初施工した特殊清掃業者に対し賠償を求めると言っていたと後日聞きました。

孤独死発生から特殊清掃や原状回復までの正しい手順

孤独死の原状回復トラブルの仲裁やアドバイス

孤独死が起きるとその原状回復過程では様々なトラブルが起こります。特に今回のようにご遺族がいる場合はなおさらで、逆に最初から相続放棄を表明して一切何もしない場合やまったくご遺族も連帯保証人もない場合はトラブルは起きません。

大家さんはいわゆる事業者に当たりますから法的知識に長けていたり経験値も高い人がいますが、ご遺族や連帯保証人は基本的には素人です。素人ゆえに今回のように死亡時点で家賃の支払義務を免れると考える人がいても不思議ではなく、キチンと説明できる人がいればトラブルは起こらなかったと言えます。本来であれば最初に相談した不動産会社の担当者がキチンと説明すべきことでした。

私たちまごのては今まで目の前で大家さんと借主との揉め事を何度も見てきました。孤独死案件だけではなくゴミ屋敷でも再三遭遇してきており、そのたびに知識さえあれば仲裁に入ったりアドバイスができるのにと考えていました。

私、佐々木久史が宅建や行政書士資格に挑んだ理由も特殊清掃現場でのトラブルに遭遇したことに起因しており、正しい法律知識を身に付ければ多くの人の役に立つと考えて宅建や行政書士資格を取り、会社としても不動産取引業の免許を取得するに至ったのです。

リフォームでグレードアップを画策した大家さん

孤独死遺族と大家さんの間で起きたトラブルのひとつをご紹介します。このお話はトラブルを未然に防ぐことができた例だと思います。

東京都内にあるアパートで住人の孤独死が発生、幸いにして死後の発見が比較的早く1週間から10日という見立てでした。亡くなっていた場所もユニットバス内のトイレということで汚れや臭いも限定的でした。

まごのては不動産会社の依頼ですぐに特殊清掃に着手し、ご遺族と話してすぐに遺品整理も行い完全消臭まで発覚から1週間とかなりスムーズに進み引渡もまごのてのスタッフとご遺族、不動産会社担当者と関係したすべての人が立ち合いの元行われました。

何事もなかったように思われたのですが、引き渡し後に大家さんが換気扇交換、エアコン交換、トイレ交換、壁紙と床の新調などフルリフォームどころかグレードアップに近いリフォームを要求してきたのです。

不動産会社担当者もどう考えても無理筋だと大家さんを諭したそうですが聞く耳を持たずご遺族に矢の催促をしたそうです。ご遺族も当初根負けして要求通りにしようかと思ってたそうですが、やはり納得いかず私に直接相談してきたのです。

大家さんの言い分としては今後三年間告知もしなければいけないし、自分自身が第一発見者となってしまったトラウマもある、そのあたりの心情も汲んでこの程度のリフォームは認めてほしいというものでした。

大家さんの気持ちも理解できるのですが、部屋自体はキレイに使われており、壁紙もフローリングも替える必要もなく、ましてやエアコンや換気扇も古い物ではなく充分使用できますし確かにトイレは死亡場所であったことから交換致し方なしと判断できましたがそれ以外は不要とジャッジしました。

結局まごのての顧問弁護士から意見書を出してもらい、当初の要求はすべて撤回されましたが、双方に少ししこりが残った印象は否めません。

トラブルを未然に防ぐのはもちろんですが、トラブルが起こらぬよう大家さんやご遺族にアドバイスしながら特殊清掃を進めるのが我々の役目だと思っていますし、孤独死の原状回復過程では双方ともに一番長く接するのが特殊清掃業者ですから当然と考えます。

まごのては技術、知識ともに申し分なしの特殊清掃業者

冒頭の大家さんとご遺族の家賃問題はそもそも最初にご遺族が手配した特殊清掃業者がキチンと消臭をしていればそこまで大きな金額にならなかった問題です。元はと言えば特殊清掃に不備があったから大家さんは引渡を拒否したのであって意地悪で拒否したわけではありません。

特殊清掃業者と掲げてるのだからどこに頼んでも一緒だろ、それなら安いところでいいではないかと安易に特殊清掃業者を選んでしまった結果です、事実冒頭の事案は特殊清掃費用は8万円だったけど何故か家財撤去は50万円を超えたそうです。

家財の量が不明なので高い安いの判断はできませんが、たとえ8万円の激安料金だとしても特殊清掃と謳ってる限り完全消臭は当然です。※他社やり直しとして施工したまごのては40万円でした、ご遺体痕はほとんど洗浄されておらず臭い濃度もそれなりに高いままでした。

つい最近もある特殊清掃業者に問合わせたところ「においが残ることはご了承ください」と言われたという笑えない話も現実的にあります。まごのては大家さんやご遺族など特殊清掃を必要とする人を悲しませたくない!その思いで技術と知識の研鑽を怠りません。

特殊清掃業界の先駆者としてオピニオンリーダーとして当然の思考ですし、今後も更なる技術追求をしていく所存です。

管理物件で孤独死が起きたら・・・まずはまごのてに相談

部屋で孤独死や人の死が発覚したらまずはまごのてにご相談ください。株式会社まごのては15年間あらゆる現場を経験しており、第一報のヒアリングだけで今すぐ何を行うべきか、今後どのように進めるべきかを的確にご提示いたします。

昨今増殖している技術のない特殊清掃業者のように「とりあえず見に行きます」とお客様の時間を奪うようなことはいたしません。

率直に言いまして東京近辺で的確かつ完璧な特殊清掃、完全脱臭が行える特殊清掃業差はそう多くありません。某保険会社の担当者がオフレコで話してくれた内容によりますと見積書や作業報告をほぼスルーで保険金支払いができるのはまごのて含め6社だけと言うことでした。

孤独死などが起きると思考停止状態になり冷静な判断が出来なくなるのも事実ですが、事故処理と同じで初動が大事です。初動さえ間違わなければ必ず最短かつ完璧に原状回復完了に行きつきますので安心してご相談ください。
記事執筆:

株式会社まごのて 代表取締役
佐々木久史

主に特殊清掃技術の開発や指導に注力しています。まごのては宅地建物取引業の免許を受けており私は専任の宅建士です、また賃管士資格を保有しており不動産取引関係には精通しています。 

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