特殊清掃コラム

法律関係
2026.09.30

孤独死後の費用は誰が払う?相続放棄・連帯保証人・大家の確認順序

原状回復の義務者と特殊清掃の範囲

「相続放棄をするので、部屋のことはもう関係ありません」――実際に、そう話されたご遺族がいました。

ところが大家さんは困ります。室内には家財が残り、特殊清掃も必要です。においや建物への影響を放置するわけにもいきません。

そこで賃貸借契約書を確認すると、そのご遺族自身が連帯保証人として署名していました。

ここで重要なのは、相続人としての立場と、連帯保証人として自分で結んだ契約上の立場は別だということです。

「相続放棄するから全部終わり」でも、「連帯保証人だから全部払え」でもありません。
まず確認するのは、誰が、どの立場で、何の費用について話をしているのかです。
この記事からわかること
1. 特殊清掃費・家財撤去費・原状回復費・家賃・損害賠償・保険は、ひとまとめにしない。
2. 相続人と連帯保証人は、同じ人でも責任の根拠が違う。
3. 相続放棄を検討しているなら、家財処分と緊急の初期対応を分けて考える。
4. 大家側も「誰に請求するか」より先に、現場状況と必要作業を記録する。
5. 請求総額ではなく、契約書・見積内訳・施工写真・作業報告を確認する。

実例|「相続放棄するので部屋はそのまま」――契約書を見たらご遺族自身が連帯保証人だった

この記事を書こうと思ったきっかけになったのが、実際にまごのてが関わった孤独死後の賃貸物件です。

ご遺族からは、「相続放棄をするので、部屋のことはそのままにします」という趣旨の話がありました。

一方の大家さんは困っていました。室内はそのままで、家財も残っています。特殊清掃やその後の明け渡しを進めようにも、ご遺族側は「相続放棄するから関係ない」という認識です。

この場面で、まごのてが最初に見るべきだと考えたのは「誰が悪いか」でも「誰に請求するか」でもありませんでした。
まず、賃貸借契約書を確認することでした。
実際に確認して分かったこと
1ご遺族は相続放棄をする意向だった
そのため、「故人の部屋には手を付けない」という考えになっていました。
2大家さん側では室内対応が止まる
家財が残り、特殊清掃や明け渡しの話も前へ進めにくい状態でした。
3賃貸借契約書を確認した
「相続するかどうか」だけで話を終わらせず、故人の賃貸契約と保証関係を確認しました。
4そのご遺族自身が連帯保証人だった
相続人として故人の権利義務を引き継ぐ話とは別に、自分自身で締結した保証契約がありました。
賃貸借契約書の保証人欄や契約内容を確認している様子
相続人としての立場だけでなく、賃貸借契約書の保証人欄、契約日、更新状況なども確認します。
この一件で強く感じたのは、「相続放棄」という言葉だけで部屋の後始末まで全部終わったことにしてはいけない、ということです。
逆に、連帯保証人だったからといって、特殊清掃・家財撤去・原状回復・家賃などを全部ひとまとめにして請求してよいという意味でもありません。
この現場から得た判断基準
相続の話故人の財産や債務を引き継ぐかどうか。
保証契約の話本人が自分で署名した契約上の立場があるか。
現場の話建物や近隣への影響を抑えるため、今すぐ必要な作業があるか。
費用の話特殊清掃、家財撤去、原状回復、家賃などを分けて確認できているか。

※この実例から分かるのは「相続放棄しても必ず保証責任が残る」ということではありません。相続人としての立場と、自分で締結した保証契約上の立場は分けて確認する必要がある、という点です。個別の法的判断は契約内容等により異なります。

結論|孤独死後の費用は「誰が全部払うか」ではなく、立場と費目を分ける

この実例のように、同じ人が「ご遺族」「相続人候補」「連帯保証人」という複数の立場を持っていることがあります。だから、故人との関係だけを見て費用負担を決めることはできません。

また、部屋に関係する支出であっても、特殊清掃、家財撤去、原状回復、未払い家賃、空室損失、保険対応は同じ根拠で処理されるものではありません。

この案件以降、まごのてでは「誰が払うのか」と聞かれたとき、先に契約書と費目を分けて見ることを重視しています。
立場 → 費目 → 契約上の根拠 → 必要性 → 金額 → 記録、の順で確認します。

相続放棄を考えている人|家財を全部処分する前に確認する

相続放棄を考えている場合、通帳、印鑑、契約書、貴重品、家財などを自己判断で処分・売却する前に、弁護士や相続手続を扱う司法書士等へ確認する必要があります。

一方で、強いにおい、虫、ご遺体痕などの影響があり、そのままでは室内確認が難しい場合は、先に初期対応が必要になることがあります。まごのてでは、この初期対応を「一次処理」と呼んでいます。

急がないこと家財の一括処分、売却、故人の財産からの支払い、債務承認、遺品整理の契約。
分けて考えること建物や共用部への影響を抑える限定的な初期対応。何を触り、何を残したか記録する。

連帯保証人|「相続放棄したから関係ない」とは限らない

連帯保証人の責任は、相続人として故人の義務を引き継ぐこととは別に、自分自身が締結した保証契約から生じます。

したがって、管理会社へ最初に確認したいのは、「私は相続人として請求を受けていますか。それとも連帯保証人としてですか」という点です。

確認項目 見るポイント
賃貸借契約書 保証人欄、契約日、更新状況
保証契約 保証範囲、極度額、保証会社の有無
請求書 家賃、特殊清掃、家財撤去、原状回復などが分かれているか
施工資料 施工前写真、対象範囲、数量、作業報告

連帯保証人であることと、請求書の全項目・全額を確認せず受け入れることは別です。

大家・管理会社|「誰に請求するか」より先に現場を残す

大家・管理会社側も、最初から請求先だけを考えると後で説明が難しくなります。

まず必要なのは、どこに影響があったのか、何を行う必要があったのか、何を撤去・復旧したのかを記録することです。

現場ご遺体があった位置、床・壁・下地への影響、共用部への影響。
施工特殊清掃、家財撤去、原状回復を混ぜずに記録。
契約相続人、連帯保証人、保証会社、保険の関係。
明け渡し解約、鍵返却、残置物、室内確認の日付を分ける。
特殊清掃前の現場状況と施工範囲を写真で記録している様子
費用負担を整理する前提として、施工前の状態、影響が及んだ範囲、撤去・復旧した箇所を写真と作業記録で残します。

請求書を見る順番|「孤独死費用一式」にしない

費目 主な内容 確認するもの
特殊清掃費 ご遺体痕、におい、虫、床・下地等への影響への対応 施工範囲、写真、工程、報告書
家財撤去費 家財の仕分け・搬出・処分 処分権限、相続方針、数量
原状回復費 床・壁・設備などの復旧 通常損耗・経年変化との区分、施工理由
家賃 契約終了・明け渡しまでの賃料 解約日、明け渡し日、鍵返却日
損害賠償 空室損失等として主張されるもの 因果関係、募集状況、契約・裁判例
保険 借家人賠償、家主側保険等 保険証券、事故報告、施工資料

関連する論点は、それぞれ別の記事で確認する

東京・千葉・神奈川・埼玉を中心とした特殊清掃の対応地域

東京都

23区
千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区、江戸川区。

多摩地域
武蔵野市、三鷹市、調布市、府中市、西東京市、小金井市、狛江市、町田市、八王子市、立川市、国分寺市、国立市、小平市、東村山市、東久留米市、清瀬市、多摩市、稲城市、日野市など。

千葉県

市川市、船橋市、松戸市、柏市、千葉市、習志野市、浦安市、流山市、鎌ケ谷市、八千代市、我孫子市など。

神奈川県

横浜市、川崎市、相模原市、藤沢市、厚木市、大和市、海老名市、座間市、鎌倉市など。

埼玉県

さいたま市、川口市、越谷市、草加市、所沢市、春日部市、戸田市、蕨市、八潮市、三郷市、吉川市、朝霞市、和光市など。

茨城県

つくば市、守谷市、取手市、つくばみらい市、常総市、牛久市、龍ケ崎市、土浦市、水戸市。

栃木県・群馬県・山梨県なども内容・地域により対応できる場合があります。

孤独死後の費用負担に関するFAQ

Q. 相続放棄をすれば、部屋のことは何もしなくてよいですか?

A. 一律には言えません。家財処分など相続財産に関わる行為は専門家へ確認する一方、建物や近隣への影響を抑える必要がある場合は、限定的な初期対応と財産処分を分けて考えます。

Q. 相続放棄をすれば連帯保証人の責任もなくなりますか?

A. 相続人としての立場と、自分が締結した保証契約上の立場は別です。契約日、更新、極度額、保証範囲などを確認します。

Q. 大家から高額な請求が来たらどうすればいいですか?

A. 総額だけで判断せず、特殊清掃、家財撤去、原状回復、家賃、損害賠償などへ分け、見積内訳、施工写真、契約書、作業報告を確認します。

Q. まごのては誰が払うべきか判断しますか?

A. 法律上の責任を決めることは行いません。現場状況、作業範囲、見積内訳、施工前後写真、作業報告など、関係者や専門家が判断するための事実整理を行います。

まずは「誰が払うか」より、現場と費目を整理します

孤独死後は、相続・保証・家財・特殊清掃・原状回復が同時に動きます。何を急ぎ、何を止め、何を専門家へ確認するかを整理したうえで、必要な作業範囲をご案内します。

03-4405-5420
受付 6:30~21:00(休業日あり)
LINEで相談する
記事執筆:

株式会社まごのて 代表取締役
佐々木久史

主に特殊清掃技術の開発や現場指導に注力しています。
孤独死・自殺・ゴミ屋敷・事故物件など、他社が断るような現場でも創業以来施工不能となった現場は一つもありません。

宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の資格((東京)第277343号)を保有しており、清掃・消臭の技術判断と「どう再生すれば資産価値を回復できるか」の不動産判断を同時に行える点が他の特殊清掃業者との最大の違いです。

日本在宅医学会・高齢者虐待防止学会での登壇実績、各行政区のゴミ屋敷条例意見交換会への出席など学術・行政の両面から現場の専門家としての地位を確立しています。

東邦大学保健衛生学部・岸恵美子教授(セルフネグレクト・ ゴミ屋敷研究の第一人者)と、現場データの共同研究を継続。 複数の学術論文に共同執筆者として名前が掲載されており、 現場実務者として学術分野での評価も確立しています。

東洋経済:ゴミ屋敷に商機を見出した男の波乱万丈人生
理念と経営:逆境の時ほど爪を研げ

株式会社まごのて
東京都江戸川区北葛西3-5-6
インボイス適格事業者登録番号:T1011701018023
宅地建物取引業:東京都知事(1) 109168
産業廃棄物収集運搬業:01300191644(株式会社MG)
宅地建物取引士 賃貸不動産経営管理士 創業15年・施工不能ゼロ 学術登壇実績あり
  • instagram
  • youtube

孤独死・自殺・事故物件の特殊清掃について、現場の状況をそのままお話しください。対応可能かどうか、費用の目安も含めてご案内します。


事故物件の処分・リフォーム・再生について、宅建士として適正な選択肢をご提案します。売る・直す・貸すどの方向でも構いません、まずご相談ください。