ゴミ屋敷片付けコラム
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賃貸アパートをゴミ屋敷化させると追い出しや損害賠償請求!
では賃借人がゴミ屋敷や汚部屋であることを理由にただちに追い出したり契約解除ができるのかという点についてもお伝えしようと思います。この記事は部屋を借りてる側と貸してる側双方に役立つものとなっています。
この記事は現役の宅建士、賃貸不動産経営管理士であるまごのての代表者佐々木久史が法的根拠と実体験に基づいて記載しました。
風潮として消費者は保護される、賃借人は保護される存在というものが根底にあるがゆえに賃貸入居時の費用を値切るだの、どんな状況であっても退去時には一銭も支払わないという考えが蔓延しているのですが、賃貸住宅とはあくまでも人の物を借りて住むものです。
借り手には自分の持ち物より一段上の注意を払わなければいけないという義務がありますので、権利主張の前に借り物は大切に使う、退去などで部屋を返すときはキレイにして返すという気持ちが大切だと思います。
ゴミ屋敷にした借主は強制退去!?汚部屋に関する法律
一昨年あるお客様から管理会社にゴミ屋敷にしてることがバレてしまい、強制退去を言渡されてしまいどうすればいいかと相談を受けたことがありました。結果的にはすぐに片付けることを約束し強制退去は免れたのですが、このお客様はどうしてゴミ屋敷であることがバレてしまったのかと、極めてプライベートな室内をゴミ屋敷状態にしたことで強制退去とまで言われなければいけないのか少し不服そうでした。
室内点検と称してゴミ屋敷化している疑いのある部屋に点検と称してチェックするという方法があるということをTwitter(現X)で見たことがあります、果たして法的にこのようなチェックが許されるのかという問題とゴミ屋敷にすると強制退去や更新拒否はあり得るのか、またその法律根拠を示していきたいと思います。
よくゴミ屋敷問題と孤独死は比較して語られることが多いですが実はまったく別物です。このような住居トラブルで問われるのは『帰責性』です、孤独死(病死)は亡くなった本人はもちろん身内や大家さんすら予見できませんので帰責性(責任)はありません。水漏れも同じで建物や設備の老朽化で起きたのならたとえ水漏れを起こした部屋だとしても責任はありません。
ところがゴミ屋敷となるとそうはいかず帰責性は当然にあります。ゴミ屋敷とは住人がゴミを捨てずため込み掃除を怠って部屋を汚したのですから責任の所在は部屋の契約者(住人)にあり善管注意義務違反であることは明白なのです。部屋を綺麗に安全に使わなければいけないという義務があるのですからそこに違反が認められれば当然に強制退去やその前段の部屋チェックもあって当たり前と考えるほうが良いと思うのです。
賃貸住宅をゴミ屋敷にすることは犯罪行為か?
部屋を散らかしたりゴミを溜めたりするのは『犯罪行為』ですか?ゴミ部屋(屋敷)にすると訴えられたりするって本当ですか?
ときどきこのような質問をされることがあります。かなり以前にゴミ部屋にしてしまい、その上水漏れを起こしてしまった女の子は逮捕される!と泣きながら電話してきたこともありました。ゴミ屋敷にしてしまうこの自体は刑法にはあたらないので逮捕されるとか、ゴミ屋敷にしたことによって『前科〇〇』というようなことはありません。
稀にゴミ屋敷に関して逮捕されたという記事もあるのですが、行政代執行妨害や過去にはゴミ屋敷の主が庭で糞尿を鍋で煮たため周囲に悪臭をまん延させたということで逮捕された例はありますが、ゴミ屋敷状態であることで逮捕されたわけではないとにご注意ください。
刑法に触れることはありませんが、賃貸住宅は借りてる物なんだから大切に扱えというルールは存在し、また賃貸住宅には様々な法律がついて回ります、ゴミ屋敷に関しては刑法には抵触しないけど、その他の法律で見た場合は完全にアウト!と考えることができるものがあります。
冒頭の強制退去の問題を受け、どの法律のどの部分がゴミ屋敷はアウトと判断されたのかを調べて考えてみました、そこで行きついたのが2020年の民法改正で明文化された民法621条です。次章ではこの民法621条とは何か、そしてゴミ屋敷とどう関係するのかを解説していきます。
民法621条は賃貸住宅を退去する際のもので借りていた人が借りていた部屋を出る時にどこまで元通りにしなければいけないかを定義づけた法律です。改正前までは若干アバウトだったものを改正し明文化したもので条文は次の通りです。
『賃借人は、原則、賃貸物の原状回復義務を負う』『ただし、通常損耗・賃借人の帰責性のない損傷については負わない』
つまり下記2点がポイントです。
1.賃貸住宅を出る時は入った時の状態に戻しなさいよ、それは部屋を借りていた人の義務ですよ。
2.元通りにしなければいけないけど通常使用や経年劣化(住んでた人の責任ではない)で破損したり汚れた物は仕方ないからそのままでいいよ。
賃貸を退去する際にあまりにもトラブルが多いので、このようにはっきりと借手側が負う責任と大家さん側が負う物をはっきり色分けしたのがこの民法621条で、改正に至った背景は平成17年の最高裁判決が元になっています、次章では判例を示しながら解説を進めます。
原状回復義務を明文化するに至った判例
賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約 の本質上当然に予定されているものであり、 それゆえ、建物の賃貸借においては、借主が 社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の 中に含ませてその支払を受けることにより行われている。
この判例は賃借人が退去をする際に普通に使用していたために起きたような汚れや傷などの補修に対し敷金から引いたり原状回復費の高額請求は不当だと訴えたことにより出た判決です。
賃貸物件という性質上部屋の損耗(傷や汚れ)は当然起こることが予定されいる、部屋を貸す側はそのことを見込んで家賃を設定し受け取っているのだから退去時に賃借人に多大な負担を押し付けてはいけない、という判例です。
賃貸の退去トラブルはひどい場合だと内装すべてを新品にするようなグレードアップが平然と行われていることもあり、それらのトラブルを未然に防ぐために改正されたのです。ではこの法律のどこがゴミ屋敷と関係し、強制退去や更新拒否の可能性をはらんでいるのかが気になるところです、次章では民法621条とゴミ屋敷について解説します。
ゴミ屋敷や汚部屋は通常使用とは言えない理由
いわゆるゴミ部屋(屋敷)や汚部屋はこの社会通念上通常の使用にあたるかどうかです、それこそ判例がありませんので一概には言えないのですが、一般的な解釈でもゴミ屋敷は社会通念上通常の使用から逸したものと考えれます。
この条文と判例はあくまでも敷金精算や退去時のトラブルから派生したものではありますが、部屋の使用について一定のルールが明文化されたとも考えることができます。
つまりゴミ部屋や汚部屋は社会通念上通常の使用を超える使用となり、場合によっては貸主側から契約解除や損害賠償請求ということも考えられなくもありません。何度も言いますがこの条文は賃貸住宅の退去時のことが明文化されただけですが社会通念上通常の使用という文言から見ても居住中のことについても適用できると考えます。
居住中は部屋をどう使おうと勝手だ、ドアの内側はプライベートなスペースなんだから干渉させないというような理論も従前は一部まかり通っていた部分がありますが(立入調査など)この条文の拡大解釈でそれらの行為も通らなくなる可能性もあります。
法律は基本的に一個人の理由や背景を斟酌することはほぼないと思って間違いありません。刑事裁判の場合は量刑を決める際にいわゆる情状酌量を加味することがありますが民事上の裁判ではほとんど加味されません。
ゴミ屋敷や汚部屋は社会通念に照らせば考えられない使用方法だ!そこに至った原因など知ったことではないというのが基本的な方針です。したがって後半でも書いてありますがもしゴミ屋敷がバレた場合は変に対抗せず非を認めて謝罪し早急に片付けて綺麗にするのが最も正しい行動であると言えます。
ゴミ部屋であったことから莫大な退去費用の請求実例
原状回復の責任や範囲が明文化されたということは裏を返せば通常使用と考えられない使い方をしていた居住者は莫大な退去費用を請求される可能性が高まったと言えます。
今までもゴミ部屋であったことが大家さんに知られていて退去時に退去費用で大きく揉めたという話はたくさんありますが、明文化されていなかったのでアバウトに処理されていたのが現状ですが、今後ははっきりと理論立てて請求される可能性が高いと考えます。
実際民法が改正される以前からもゴミ屋敷であった場合の退去費用については感情論も入り混じり、すんなり収まることは稀でほとんどが揉めに揉めまくります。退去時のトラブルを回避するためにも日ごろから部屋を大切に使うという意識は大切です。
強制退去や更新拒否を回避させる方法
ひとたびゴミ部屋(屋敷)汚部屋としてしまったらサンドバッグ状態で言われるまま応じなければいけないのかと言えばそうではありません。条文中にある「通常損耗・賃借人の帰責性のない損傷については負わない」というのがポイントです。一時的にゴミを溜めたり汚したりはしたけれど、通常に使用していたレベルまで回復させれば問題ないという考え方です。
まごのてで経験した事例ですが、大家さんはゴミを長年溜めている賃借人がいることを知っていました、その賃借人(すなわちまごのてへの依頼者)が退去の際にゴミを片付け、水回りや部屋全体をクリーニングしそれなりの状態で返還したにも関わらず、大家さんは居住中の行為により建物自体に損傷が出たとして莫大な現状回復費を請求したのです。
まだ上記条文が明文化される前だったので、部屋で孤独死や自殺による損害賠償請求の事例を示し私たちが中に入って交渉し住んでいた期間なりの部屋として返還されたと納得してもらったことがありました。つまりゴミ屋敷にしてしまい部屋を汚損させたり破損させたとしても、賃借人の責任できちんと元通りにすれば問題ないということになります。
原状回復トラブルが起きやすいふたつの事象
まごのてでは過去に数百件の孤独死が起きた部屋の特殊清掃を手掛けてきましたが、ご遺族と物件オーナーや不動産会社との原状回復トラブルは後を絶ちません。ゴミ屋敷でもこれだけ大きな問題に発展する可能性があるのだから孤独死ともなれば損害賠償など莫大ではないかと思うかもしれませんが、実は孤独死で損害賠償請求は発生しません。
意外かもしれませんが、孤独死とゴミ屋敷はよく同列に扱われるのですがこの2点には大きな違いがあるのです。
ゴミ屋敷→住んでる人の故意過失であり帰責性が大きい。
孤独死→故意過失ではない、したがって帰責性もない。
孤独死は本人ですら予見できないのだから帰責性(本人の責任)はないという考え方です、一方ゴミ屋敷は悪意はないにしても故意(ワザと)であり過失だから責任はあるというものです。
孤独死が起きた場合の部屋の汚れや傷みはゴミ屋敷の比ではありませんが、責任という点に於いてはまったく違うのです。孤独死の特殊清掃や原状回復の範囲については特殊清掃ページに書いてありますので興味のある方はご覧ください。
孤独死の特殊清掃もまごのてにお任せください
そして孤独死の場合帰責性はないですが部屋の連帯保証人や相続人には部屋を綺麗にして明け渡す義務はありますので、亡くなったからと言って明け渡しの際の原状回復義務まで免責されることはなく、死亡による汚損などの損害賠償請求はされないものの部屋を元通りにする義務と責任はありますのでご注意ください。
部屋を空にした結果、ゴミ屋敷状態だったことによる汚損や破損は当然元に戻さないといけませんし、特殊清掃によって汚れや臭いを取らないといけないのは言うまでもありません。
孤独死が起きた場合の後始末にかかる費用や責任の範囲についてまとめた記事がありますので是非ご一読ください。
もしも大家さんにゴミ屋敷がバレてしまったら
お客様がゴミ屋敷を片付けるという目的や片付けを思い立った経緯の中では引越や点検が理由が多いのは周知のことと思いますがゴミ屋敷の発覚原因が点検からというのも多いのです。
点検以外にもゴミ屋敷がバレてしまう例はいくつもあるのですが、特に近隣からの苦情(虫やにおい)もそれなりにあり、戸建てと違ってマンションやアパートの場合は室内で進行するので近隣から苦情が来るレベルまでいくと相当ゴミ屋敷が進行してることが多いのも事実です。
もしゴミ屋敷がバレてしまったら対処法はひとつしかありません、期限を決めて片付け計画を伝える、いつまでに片付けてキレイにすることを伝え、そして謝り倒す!これが一番の解決の近道です。
賃借人にも大家さんにも双方丸く収まるようにアドバイスし遺恨を残さないよう努めます!なお本サービスはまごのての各種サービスをご利用の方を限定としたものです、また訴訟や代理交渉が必要な場合は別途費用を申し受けます。
素早く対応できるゴミ屋敷片付け業者
株式会社まごのて 代表取締役
佐々木久史
主に特殊清掃技術の開発や指導に注力しています。まごのては宅地建物取引業の免許を受けており私は専任の宅建士です、また賃管士資格を保有しており不動産取引関係には精通しています。
東洋経済:ゴミ屋敷に商機を見出した男の波乱万丈人生
理念と経営:逆境の時ほど爪を研げ
孤独死が起きてお困りの方は私にお気軽にご相談ください。