特殊清掃コラム
作業前8、作業中63|外廊下まで臭気が漏れた特殊清掃で見えた“隠れた臭気源

「隣の入居者から、廊下まで臭いが出ていると苦情が入っています」
今回の相談は、不動産管理会社からの連絡でした。
分かっていたのは、亡くなられてから約1ヶ月が経過していること。
そして、臭気が室内にとどまらず、外廊下まで漏れていることでした。
管理会社にとってこの段階で問題なのは、室内の状態が分からないまま近隣対応を迫られ、原状回復の判断材料がないことです。
まごのてが実際に入ったこの現場で、最も記録しておくべきなのは、自死の事情や室内の凄惨さではありません。「臭気数値の動き」です。
外廊下まで臭っていたのに、作業前の体液汚染箇所直近は「8」。
しかし、汚染物を動かした瞬間、居室内「31」、体液汚染中心部「63」、水回り「60」、床下・ユニット基部「40」まで数値が跳ね上がりました。
この記事では、作業前の測定値だけでは見えなかった“隠れた臭気源”を、作業中・作業後の数値からどのように追いかけ、何を管理会社への報告材料としたのかを施工記録としてまとめます。
自死が関係した事案ですが、具体的な方法、遺書の内容、個人が特定される情報は掲載しません。
外廊下・玄関前の状況。室内に入る前から臭気漏れが確認され、管理会社として近隣対応を急ぐ必要があった現場です。※部屋番号や物件が特定される情報は伏せています。
苦情は室内ではなく、外廊下の臭いから始まった
この案件で管理会社が最初に困っていたのは、室内をどう清掃するかではありません。隣室から苦情が入っており、外廊下で臭いが分かる状態だったことです。
つまり、まだ室内の状態が分からない段階で、すでに近隣対応は始まっていました。
共用部まで臭気が漏れている場合、他入居者への説明や、原状回復の段取りに影響することがあります。
特殊清掃の現場では、部屋の中だけを見ればよいわけではありません。外廊下、隣室、上下階、共用部にどこまで影響が出ているかを見ながら、初動を決める必要があります。
玄関を開ける前から臭うのに、作業前の数値は8だった
作業前の測定値は、外気0、玄関付近3、体液汚染箇所直近8でした。
外廊下まで臭いが漏れていた感覚からすると、数字だけ見れば低く見えるかもしれません。
作業前の臭気測定。外気を基準にしたうえで、玄関付近・体液汚染箇所直近の数値を記録し、作業前後の比較材料にします。
しかし、ここで「数値が低いから軽い現場だ」と判断してはいけません。
臭気は空気中に出ているものだけではなく、床材、カーペット、寝具、衣類、水回り、冷蔵庫、押し入れなどに吸着している場合があります。作業前の8は、現場が軽いという意味ではなく、“まだ動かしていない臭気源が残っている可能性がある”という見方をしてください。
臭いが消えたのではなく、動いていなかっただけの場合がある
特殊清掃の現場では、入室した瞬間の体感だけで判断すると、臭気源を見落とすことがあります。
一定期間、室内の空気がほとんど動いていないと、臭気が空気中に強く出続けるのではなく、床材、布類、壁際、押し入れ、水回り、残置物などに沈着・吸着したような状態になることがあります。
そのため、玄関を開けた直後や、作業前の短い確認だけでは「思ったより臭わない」と感じることがあります。しかし、それは臭気源が消えているという意味ではありません。
こうしたきっかけで、止まっていた臭いが一気に戻ることがあります。
床材・布類・残置物が残る室内の状況。空気が動いていない間は体感臭が弱くても、荷物や床材を動かすことで臭気が戻る場合があります。
今回の現場でも、作業前の体液汚染箇所直近は8でした。しかし、汚染物を動かし始めると、体液汚染中心部で63、洗面・トイレ周辺で60、床下・ユニット基部で40まで数値が上がりました。
これは、作業前の数値が間違っていたという話ではありません。空気が動いていない状態では表に出ていなかった臭気が、作業によって表に出てきたということです。
特殊清掃で難しいのは、この「止まっている臭い」を読むことです。体感的に臭いが弱いから軽い現場と見るのではなく、どの物を動かしたときに臭気が戻るか、どの場所に臭気が残っているかを見ながら進める必要があります。
臭いの出方は、室内の温度や湿度、季節、空調、換気状況によっても変わります。季節ごとの初動判断については、 孤独死現場は夏と冬で何が違う?特殊清掃の初動判断 でも整理しています。
数字が跳ねたのは、汚染物を動かした瞬間だった
作業中に臭気数値が上がることを、作業の失敗のように見せないでください。むしろ、臭気源が露出した瞬間です。
汚染物を特殊袋へ密封する。
カーペットや寝具を動かす。
フローリング表面の固着物を処理する。
床材の継ぎ目やユニット基部を確認する。
この過程で、閉じ込められていた臭気が空気中に出ます。
今回も、作業前8だった場所が、作業中には63まで上がりました。これは、作業前の数値だけでは見えていなかった臭気源が表に出てきたということです。
作業中63、水回り60。臭気源は床だけではなかった
この現場では、体液汚染中心部だけでなく、洗面・トイレ周辺でも60が出ています。つまり、臭気源は床だけではありませんでした。
水回り・残置物の確認。体液汚染箇所だけでなく、洗面・トイレ・冷蔵庫・収納内の物も臭気を吸着している場合があるため、臭気源候補として分けて確認します。
水回り、冷蔵庫、シンク、クローゼット、押し入れ、衣類などは、室内に滞留した臭気を吸いやすい場所です。体液汚染箇所を処理しても、こうした場所を見落とすと臭いが戻ることがあります。
死後日数が経過した現場では、最初に臭気源や汚染箇所を抑える一次処理が重要になります。一次処理そのものの考え方は、 孤独死で部屋に入れない時の初動対応 でも整理しています。
作業後11~18まで下がっても、「終わり」とは言い切らない理由
作業後、室内は11、養生材上は18まで下がりました。外廊下への臭気漏れは抑えられました。
ただし、ここで「完全に終わった」とは書きません。
消臭処理後の確認。外廊下への臭気漏れを抑えたうえで、室内に残る数値を確認し、床材・内装・追加消臭など次工程の判断材料にします。
作業後に11~18という数値が残っている以上、次工程として床材の扱い、内装、追加消臭、換気、原状回復の判断が残る場合があります。
管理会社にとって大切なのは、“外廊下への臭気漏れが抑えられた”ことと、“次に内装や原状回復で見るべき場所はどこか”を報告できる形にすることです。
個人情報や遺留品が見つかった場合の扱い
特殊清掃の作業中には、書類、写真、手紙、遺書など、個人情報や故人の意思に関わるものが見つかることがあります。今回の現場でも、自死が関係した事案であることが作業中に分かりました。
ただし、この記事で扱うのはその内容ではありません。個人が特定される情報や遺書の内容は掲載せず、管理会社・警察・関係者の指示に従って取り扱います。この記事では、臭気源の確認、作業中の数値変化、管理会社へ報告できる材料に絞って記録します。
※自死現場で遺書や残された指示をどう扱うかについては、特殊清掃員が自殺現場で本当に向き合うものでも整理しています。この記事では、遺書の内容ではなく、臭気源処理と管理会社への報告材料に絞って記録します。
管理会社がほしいのは、感想ではなく報告できる材料です
特殊清掃の現場では、「かなり臭かったです」「きれいになりました」といった業者の主観や感想だけでは、オーナー様への報告や保険申請の根拠になりません。
隣室から苦情が入っている。外廊下まで臭いが出ている。オーナーへ説明しなければならない。原状回復や再募集の判断もしなければならない。
そのときに必要なのは、写真、作業前後の臭気数値、どこを処理したか、どこに数値が残ったかという客観的な報告材料です。
※特殊清掃では、作業後に何を報告してもらえるかも大切です。業者選びで確認したい作業記録や報告内容については、 特殊清掃業者を「早い・安い・資格」だけで選ばないための記事 でも整理しています。
外廊下まで臭っているとき、管理会社が最初に共有してほしいこと
管理会社やオーナー様が特殊清掃をご相談される際、以下の情報を事前にお伝えいただくと、初動の組み方がスムーズになります。
室内の写真がない段階でも、発見からの日数、臭気が漏れている場所、警察対応の状況、鍵の手配が分かれば、初動の組み方を整理できます。無理に管理担当者が室内へ入って写真を撮る必要はありません。
よくある質問(FAQ)
まとめ
この現場で重要だったのは、外廊下まで臭っていたことだけではありません。
作業前の体液汚染箇所直近は8でした。
数字だけを見れば、死後1ヶ月超の現場としては軽く見えるかもしれません。
しかし、汚染物を動かすと数値は63まで上がり、水回りでも60、床下・ユニット基部でも40が出ました。
臭気は、最初からすべて空気中に出ているとは限りません。
空気の動きが少ない室内では、床材、布類、水回り、残置物などに止まっていることがあります。
それを動かしたときに臭いが戻るかどうかを読むことが、特殊清掃の現場判断です。
管理会社・オーナーにとって大切なのは、体感だけで「臭う・臭わない」を判断することではありません。
どこを測り、何を動かしたときに数値が上がり、作業後にどこまで下がったのかを記録として残すことです。
まごのてでは、現場の悲惨さを見せるのではなく、次の判断に必要な材料を残すことを大切にしています。
よりそいホットライン:0120-279-338(24時間対応・通話料無料)
電話で話すことが難しい場合は、厚生労働省「まもろうよ こころ」の相談窓口も確認できます。
管理会社・オーナー様からの特殊清掃相談もお受けしています
外廊下や共用部まで臭気が漏れている場合、室内の汚染源処理だけでなく、近隣対応や原状回復の段取りも含めて、初動を整理する必要があります。
ご相談時には、分かる範囲で以下をお伝えください。
- ・発見からどのくらい経っているか
- ・臭気がどこまで漏れているか
- ・警察対応が終わっているか
- ・鍵の手配状況
- ・管理会社、オーナー、ご遺族のどなたが窓口になるか
- ・残置物の扱い
- ・写真があるかどうか
無理に室内へ入って写真を撮る必要はありません。
現在の状況と物件条件を伺ったうえで、現地確認・一次処理・除菌・消臭・残置物対応の範囲を整理します。
まごのてでは、東京都・千葉県・神奈川県・埼玉県を中心に、孤独死後の特殊清掃、臭気測定、一次処理、除菌・消臭、残置物対応の相談を受けています。
東京23区、千葉県西部、神奈川県東部、埼玉県南部などは、管理会社・オーナーからのご相談を受けることが多いエリアです。現地確認の可否は、鍵の手配状況、警察対応の完了、スタッフの状況、物件の場所によって変わります。
詳しくは、まごのての特殊清掃サービスもご確認ください。
受付時間 6:30~21:00
株式会社まごのて 代表取締役
佐々木久史
孤独死・自殺・ゴミ屋敷・事故物件など、他社が断るような現場でも創業以来施工不能となった現場は一つもありません。
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の資格((東京)第277343号)を保有しており、清掃・消臭の技術判断と「どう再生すれば資産価値を回復できるか」の不動産判断を同時に行える点が他の特殊清掃業者との最大の違いです。
日本在宅医学会・高齢者虐待防止学会での登壇実績、各行政区のゴミ屋敷条例意見交換会への出席など学術・行政の両面から現場の専門家としての地位を確立しています。
東邦大学保健衛生学部・岸恵美子教授(セルフネグレクト・ ゴミ屋敷研究の第一人者)と、現場データの共同研究を継続。 複数の学術論文に共同執筆者として名前が掲載されており、 現場実務者として学術分野での評価も確立しています。
東洋経済:ゴミ屋敷に商機を見出した男の波乱万丈人生
理念と経営:逆境の時ほど爪を研げ
株式会社まごのて
東京都江戸川区北葛西3-5-6
インボイス適格事業者登録番号:T1011701018023
宅地建物取引業:東京都知事(1) 109168
産業廃棄物収集運搬業:01300191644(株式会社MG)
孤独死・自殺・事故物件の特殊清掃について、現場の状況をそのままお話しください。対応可能かどうか、費用の目安も含めてご案内します。
事故物件の処分・リフォーム・再生について、宅建士として適正な選択肢をご提案します。売る・直す・貸すどの方向でも構いません、まずご相談ください。










