特殊清掃コラム

孤独死の消臭
2026.08.02

特殊清掃のにおい測定事例|作業中63で見えた隠れた臭気源

においが廊下まで漏れた孤独死現場

外廊下までにおいが漏れているのに、作業前に「床への影響が確認された場所」の直近で測ると、表示は8でした。ところが、家財や床周辺を動かしながら確認すると、居室内31、影響箇所の中心63、洗面・トイレ周辺60、床下・ユニット基部40まで上がりました。

この変化は、作業中に新しくにおいを発生させたという意味ではありません。動かす前には空気中へ十分に出ていなかった原因が、作業によって表に出た可能性を示す記録です。

この記事では、作業前・作業中・作業後の測定値を並べ、どこを確認し、何を次工程へ残したのかを施工記録から解説します。掲載する数値は、ハンディにおいモニターの表示値であり、悪臭防止法上の「臭気指数」ではありません。

写真と記録は、故人や物件が特定されない範囲に整理し、工程説明に必要なものだけを掲載しています。

この記事からわかること
作業前8から作業中63へ上がった理由
測定値と法令上の臭気指数の違い
場所・時刻・作業を一組で記録する意味
作業後11~18を「完了」と断定しない理由

結論|重要なのは「63という数字」ではなく、どこで何を動かしたときに上がったかです

この現場で最も重要な記録は、最高値が63だったことだけではありません。作業前は8だった場所が、床周辺の物を動かした直後に63へ上がり、別の水回りでも60、床下・ユニット基部でも40が確認されたことです。

一つの数字だけを見ると、「8だから軽い」「63だから重い」と決めたくなります。しかし、特殊清掃の工程判断では、次の4点を一組で見ます。
 

どこで測ったか
いつ測ったか
その直前に何を動かし、何を処置したか
作業後に同じ条件でどこまで変化したか
 
測定器は、においの原因を自動的に特定する機械ではありません。数値の変化と、場所・作業記録を重ねることで、次に確認すべき箇所を絞るために使います。
消臭の全体像

測定器の「63」は、法令上の臭気指数63ではありません

今回使用したのは、神栄テクノロジー株式会社のハンディにおいモニターOMX-ADMです。メーカー資料では、半導体ガスセンサの出力を数値化し、清掃前後などの変化を相対的に見える形にする機器として案内されています。

一方、悪臭防止法上の「臭気指数」は、人の嗅覚を使い、においを感じなくなるまで希釈する所定の方法を基に算定する別の指標です。本記事の8、63、60、40、11、18は、法令上の臭気指数や規制値ではありません。
 

項目 本記事の測定値 法令上の臭気指数
測定方法 ハンディにおいモニターのセンサ表示 人の嗅覚を使う所定の嗅覚測定法
主な使い方 同じ現場で場所・工程前後の変化を比較する 悪臭防止法に基づく規制・行政測定など
数値の読み方 機器、測定方法、場所、時刻、作業状態をそろえて相対比較する 告示で定められた方法に従って算定する
この記事での結論 63は「作業中に表示された値」 臭気指数63を示すものではない
注意:「63だから危険」「8だから安全」「11なら完全消臭」といった絶対評価はできません。数値は、作業記録と組み合わせて読む必要があります。

比較できる記録にするため、外気・場所・時刻・作業状態をそろえます

測定値を工程判断に使うには、数値だけをメモするのでは不十分です。今回は外気を基準にし、室内の場所と時刻、作業前・作業中・作業後の状態を分けて記録しました。

同じ機器と同じ測定方法を使う
外気など基準となる場所を先に測る
玄関、居室、影響箇所の周辺、水回り、床下など測定場所を分ける
窓、換気、空調、薬剤使用の状態を記録する
物を動かした時刻と、その直後の測定値を対応させる
作業後は換気直後だけでなく、乾燥後や窓を閉めた状態でも確認する

異なる業者や異なる機器の数字だけを並べても、条件が違えば単純には比較できません。「どの数字が大きいか」より、同じ現場内でどう変化したかを確認します。

現場概要|外廊下までにおいが漏れていましたが、作業前の直近値は8でした

相談元は不動産管理会社でした。発見まで約1か月が経過し、隣室から外廊下のにおいについて申告が入っていました。管理会社は、室内の状態が分からない段階で近隣対応を始める必要があり、原状回復の判断材料も不足していました。
 

作業前の測定記録

時刻 測定場所 表示値 記録した状態
09:20 外気 0 基準値として測定
09:20 玄関付近(室内) 3 室内へ入った直後
09:21 床への影響が確認された場所の直近 8 家財や床周辺を大きく動かす前
特殊清掃現場の玄関付近でOMX-ADMを使い表示値3を記録している様子

玄関付近で表示値3を記録した場面。外廊下でにおいが分かる状況でも、室内の一地点を短時間測った数値だけでは、部屋全体の原因範囲は判断できません。

床への影響が確認された場所の周辺でOMX-ADMの表示値8を記録している様子

家財や床周辺を動かす前の表示値は8でした。この段階では、床材、布類、収納、水回りなどに残るにおいが空気中へ十分に出ていない可能性があります。

作業前8を見て「軽い現場」と判断できない理由

室内の空気が長く動いていないと、においは常に同じ強さで空気中へ出続けるとは限りません。床材、寝具、衣類、収納、壁際、水回り、残された家財などに影響が残り、入室直後には弱く感じる場合があります。

その状態で、人が歩く、寝具やカーペットを持ち上げる、収納を開ける、床材の継ぎ目へ触れる、換気や空調で空気を動かすと、止まっていたにおいが再び表に出ることがあります。

今回、数値変化を確認するきっかけになった作業
床周辺に残っていた物を個別に動かした
寝具や布類を持ち上げ、梱包範囲を確認した
床表面と継ぎ目の状態を確認した
洗面・トイレ周辺を別の測定場所として確認した
床下・ユニット基部まで測定場所を広げた
 
クローゼット内の衣類や残置物をにおいの原因候補として確認している現場

収納や衣類も、室内に残ったにおいの影響を受けることがあります。亡くなられた場所の周辺だけに測定範囲を限定せず、場所ごとに確認します。

作業中は31・63・60・40へ上昇し、確認範囲が床だけではないと分かりました

家財や床周辺を動かしながら測ると、居室内31、影響箇所の中心63、洗面・トイレ周辺60、床下・ユニット基部40へ上がりました。

時刻 測定場所 表示値 数値と作業記録から確認したこと
10:32 外気 0 作業中も外気の基準値を再確認
10:33 居室内 31 室内の物を動かし、空気が動いた後に上昇
10:34 影響箇所の中心(除去作業中) 63 閉じ込められていたにおいが作業で表に出た可能性
10:35 洗面・トイレ周辺 60 床の中心部以外にも確認範囲を広げる必要
10:35 床下・ユニット基部 40 表面だけでなく下部・境界部を次工程でも確認する必要

ここで大切なのは、測定器だけで「水回りが原因」「床下が原因」と断定しないことです。機器は複合したにおいの変化を示します。数値が上がった場所、建材の状態、直前に動かした物、目視確認、作業記録を重ねて、原因候補を絞ります。

作業中に数値が上がったことは、消臭作業の失敗を意味しません。見えにくかった原因が露出し、次に処置すべき場所を確認できた可能性があります。

場所ごとに「残す・洗浄する・外す・再確認する」を分けました

測定値の役割は、すべてを同じ方法で処理することではありません。場所と状態に応じて、残す物、個別に確認する物、洗浄する箇所、外して下を確認する範囲を分けます。

確認した場所・物 この現場で行ったこと 次工程で残した判断
床周辺のカーペット・寝具・衣類 個別に密封し、扱いを分けた 搬出後に床表面と継ぎ目を再確認
床表面に残った跡 状態に応じて専用薬剤で処置 乾燥後の数値と体感を再確認
床材の継ぎ目・下部 範囲を分けて確認し、必要箇所を処置 床材を残すか、追加で外すかを判断
ユニットバス・トイレ・洗面 場所を分けて確認し、必要範囲を清掃 水回り周辺に数値が残るか再確認
キッチン・冷蔵庫内部 残った物と内部の状態を確認 清掃・搬出・保管の区分を決める
収納・衣類 においの影響と残す物を個別に確認 室内処置後に再びにおいが出ないか確認

においの原因を確認せず、最初から部屋全体を壊すのも、反対に表面だけを拭いて終えるのも適切ではありません。測定と現場確認を使い、必要な範囲を段階的に決めます。

作業後11~18まで下がっても、「完全消臭」とは判断しません

初期の処置後、外気0、室内11、養生材上18まで下がり、外廊下へのにおい漏れは抑えられました。ただし、この時点では床材の扱い、下地、乾燥、追加処置、原状回復など、次に判断する項目が残っています。

時刻 測定場所 表示値 この時点で言えること
11:14 外気 0 作業後の基準値
11:15 室内 11 作業中より低下。外部への漏れを抑える初期工程の効果を確認
11:15 養生材上 18 処置箇所周辺には確認が必要な数値が残った
特殊清掃の作業後に養生材上でOMX-ADMの表示値18を記録している様子

作業後、養生材上で表示値18を記録した場面。作業中の63から下がったことは確認できますが、この一枚だけで完全消臭を証明するものではありません。

作業後に残る確認

十分に乾燥させた後も同じ場所で数値が戻らないか
窓を閉め、室内の空気が落ち着いた状態でどう変化するか
床材の継ぎ目、巾木、床下、収納、水回りに差が残っていないか
気温や湿度が変わったときに、においが再び分かる状態にならないか
追加の洗浄、防臭処理、オゾン発生器による補助工程、原状回復のどこまで必要か
補助工程の考え方

測定値は作業の「合否」ではなく、原因確認・工程比較・報告の記録です

におい測定を行う目的は、機械の数字だけで現場へ合格・不合格を付けることではありません。この実例では、主に三つの用途がありました。

用途 記録したこと 次の判断
原因候補を絞る 物を動かした直後に、どの場所で上がったか 洗浄、撤去、下部確認の優先順位
工程前後を比較する 作業前8、作業中63、作業後11~18という変化 初期工程で抑えられた範囲と、残った範囲
管理会社へ報告する 時刻、場所、数値、写真、処置内容 近隣説明、オーナー報告、原状回復の検討

「かなりにおいがしました」「きれいになりました」という感想だけでは、次の担当者が判断できません。どこを測り、何を動かし、どこまで下がり、何が未確認なのかを分けて残すことが大切です。

におい測定で誤りやすい6つの見方

最初の一地点だけを測り、その数字を部屋全体の評価にする
測定器の表示値を、法令上の臭気指数や安全基準と同じものとして扱う
異なる機器、異なる場所、異なる換気条件の数値を単純に比較する
薬剤やオゾン発生器の使用直後だけを測り、元のにおいが分かりにくい状態で完了とする
数値が上がった直前に、何を動かしたか記録していない
作業後に下がった一回の測定だけで、乾燥後や温度変化後の再確認を省く
業者へ確認するポイント:測定器を持っているかどうかより、「測定条件と作業内容を対応させて説明できるか」を確認してください。

管理会社・オーナーが業者へ確認する7つの質問

管理会社やオーナーが必要としているのは、専門用語の多さではなく、次の判断へ使える記録です。

使用した測定器の名称と、数値の意味をどう説明しますか
外気などの基準値はどこで測りましたか
測定した時刻、場所、窓・換気・空調の状態を記録していますか
数値が上がった直前に、何を動かし、何を処置しましたか
作業前・作業中・作業後の写真と数値を対応させて報告できますか
作業後に数値が残った場所を、次にどう確認しますか
何をもって初期工程の完了、二次処理の完了、原状回復への移行と判断しますか

確認済みの範囲と未確認の範囲が分かれていれば、管理会社は近隣対応、オーナー報告、保険会社への資料提出、原状回復の見積もりへ進みやすくなります。

他社施工後の再確認

対応地域|東京・千葉・神奈川・埼玉を中心に相談できます

まごのての特殊清掃・におい測定・消臭の主な対応地域は、東京都・千葉県・神奈川県・埼玉県です。茨城県・栃木県・群馬県・山梨県につきましては、作業内容、見込まれる日数、家財量、搬出条件などにより対応できる場合があります。

外廊下や共用部までにおいが分かる場合は、室内だけでなく、玄関、共用廊下、隣室との境、上下階への影響を確認して初動を組みます。管理会社の確認日や退去・引渡しの期限が近い場合は、期限から逆算して相談内容を整理する方法も参考にしてください。最短即日で相談や現地確認を調整できる場合はありますが、特殊清掃や完全消臭が即日で完了するという意味ではありません。

よくある質問(FAQ)

Q. 測定値63は、法令上の臭気指数63という意味ですか?

A. いいえ。本記事の数値は、ハンディにおいモニターOMX-ADMに表示された値です。悪臭防止法上の臭気指数は、人の嗅覚を用いた所定の方法で算定される別の指標です。63という数字だけで法令上の基準超過や危険性を判断することはできません。

Q. 作業前8だったのに、作業中63まで上がったのは測定ミスですか?

A. 測定ミスとは限りません。家財や床周辺を動かす前には空気中へ出ていなかったにおいが、作業によって表に出た可能性があります。どこで、何を動かしたときに数値が変わったかを作業記録と一緒に確認します。

Q. 数値が低ければ、特殊清掃は完了したと判断できますか?

A. 一つの数値だけでは判断できません。換気直後、薬剤使用直後、窓を開けた状態では低く見えることがあります。乾燥後、窓を閉めた状態、時間や温湿度条件を変えた状態でも再確認します。

Q. におい測定器があれば、人の確認は不要ですか?

A. 不要にはなりません。測定器は場所ごとの変化を比較し、記録に残すための補助です。においの種類、建材の状態、床下や収納の確認、作業内容と組み合わせて判断します。

Q. 異なる業者の測定値をそのまま比較できますか?

A. 機器、設定、測定位置、測定時間、換気状況などが異なると単純比較はできません。同じ機器と測定方法で、外気の基準値、場所、時刻、作業状態をそろえて比較することが重要です。

Q. 管理会社やオーナーは、どの記録を受け取ればよいですか?

A. 測定時刻、測定場所、数値、窓や換気の状態、その直前に行った作業、処置した場所、写真、次に確認する場所を一組で受け取ると、オーナーへの報告や次工程の判断に使いやすくなります。

Q. 外廊下までにおいが漏れている場合、管理担当者が先に入室すべきですか?

A. 警察対応や入室可否が確認できていない場合、室内の状態が分からないまま無理に入る必要はありません。発見からの日数、においが分かる場所、鍵、警察対応、近隣からの申告を整理して専門業者へ伝えてください。

まとめ|作業前8、作業中63、作業後11~18は、一つの工程記録として読みます

この現場では、外廊下までにおいが分かる状態でも、作業前の直近値は8でした。しかし、床周辺の物を動かすと63、水回りでは60、床下・ユニット基部では40へ上がりました。

重要なのは、63という数字を大きく見せることではありません。動かす前には見えにくかった原因が、どの作業で、どの場所から表に出たのかを確認できたことです。

作業後は室内11、養生材上18まで下がりましたが、完全消臭と断定せず、乾燥後、窓を閉めた状態、温度や湿度が変わった状態でも再確認します。測定値を、場所・時刻・作業内容と一組で残すことが、におい戻りを防ぎ、管理会社やオーナーが次工程を判断する材料になります。

測定方法に関する参考資料

上記資料は、測定器の用途と、法令上の臭気指数との違いを確認するために参照しています。本記事の現場数値は、まごのての施工記録に基づきます。

外廊下や共用部までにおいが分かる場合は、場所と時系列を整理してご相談ください

無理に室内へ入り、写真や数値をそろえる必要はありません。発見からの日数、においが分かる場所、警察対応、鍵の手配、近隣からの申告、管理会社やオーナーの確認期限を、分かる範囲でお伝えください。

まごのてでは、原因箇所の確認、家財撤去前の初期工程、におい測定、家財対応、二次処理、原状回復を分けて整理します。正式な現地見積もりは有料です。夜間作業は行っていません。

電話受付 6:30~21:00/休業日あり

記事執筆:

株式会社まごのて 代表取締役
佐々木久史

主に特殊清掃技術の開発や現場指導に注力しています。
孤独死・自殺・ゴミ屋敷・事故物件など、他社が断るような現場でも創業以来施工不能となった現場は一つもありません。

宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の資格((東京)第277343号)を保有しており、清掃・消臭の技術判断と「どう再生すれば資産価値を回復できるか」の不動産判断を同時に行える点が他の特殊清掃業者との最大の違いです。

日本在宅医学会・高齢者虐待防止学会での登壇実績、各行政区のゴミ屋敷条例意見交換会への出席など学術・行政の両面から現場の専門家としての地位を確立しています。

東邦大学保健衛生学部・岸恵美子教授(セルフネグレクト・ ゴミ屋敷研究の第一人者)と、現場データの共同研究を継続。 複数の学術論文に共同執筆者として名前が掲載されており、 現場実務者として学術分野での評価も確立しています。

東洋経済:ゴミ屋敷に商機を見出した男の波乱万丈人生
理念と経営:逆境の時ほど爪を研げ

株式会社まごのて
東京都江戸川区北葛西3-5-6
インボイス適格事業者登録番号:T1011701018023
宅地建物取引業:東京都知事(1) 109168
産業廃棄物収集運搬業:01300191644(株式会社MG)
宅地建物取引士 賃貸不動産経営管理士 創業15年・施工不能ゼロ 学術登壇実績あり
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孤独死・自殺・事故物件の特殊清掃について、現場の状況をそのままお話しください。対応可能かどうか、費用の目安も含めてご案内します。


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